省益拡大、予算拡大を目指す児相
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省益拡大、予算拡大を目指す児相

厚労省は児虐法制定によって省益拡大の広大な基盤を手に入れることになった。障碍児や罪を犯す少年らが数字の上で急に増えることはあまりないが児童虐待に関して言えば、その定義が曖昧な裁量に委ねられてしまっているので「虐待」とされる境界線を恣意的に変更してしまえば、いくらでも実質的な数を増やすことが可能である。

都道府県または政令指定都市の行政機関である児相は、略取・拘禁したり施設に放り込んだりした子供の数に応じて国費を享受できる仕組みになっている。その根拠は、「児童福祉法による児童入所施設措置費等国庫負担金について」という通達で、拘禁した子供の費用が一人当たり「保護単価」として国から支出される。「保護単価」には児相の事務費及び事業費(事務費以外の諸経費)も含まれている。

こうした予算制度の枠組みでは、子供を略取・拘禁すればするほど予算が増えることになるので、略取・拘禁への強い経済的誘因が児相に存在することになる。児相にとって子供とは、単刀直入に言って「金のなる木」なのである。児相が厚労省に提出する別の文書には「前年比」を書く欄が存在し、前年と比べてどれだけ多くの子供を略取・拘禁したかを数字で明示する必要がある。前年比が高いほど行政実績が評価されるのであろう。

また、地方での支出予算にを向けてみても、例えば横浜市では、2013年度の児相の総予算1,141,543円の過半に当たる、576,073円が子供の「一時保護事業」費用であり、「児童虐待防止対策事業」とされる180,207円と合わせると、その比率は三分の二にも到達する。横浜市内の各児相では、子どもを拘禁する保護所の増設が加速している。予算や事業計画から鑑みても、児相はいまや「児童強制収容所」としても権力性を暗に示し始めているといってもよいかもしれない。

「児童虐待」が増加傾向を示しているのは、決して日本の家庭が最近急に子供を手荒く扱うようになったからではない。われわれは、厚労省のプロパガンダに乗せられてはならないだろう。例えば、学校側の通達によって発生した晃華学園事件の一連の流れもその流れに乗せられてしまった結果だと推察される。

このようにして児相に割り当てられる予算の一部は、虐待を受けたとされる子供の施設措置を家裁に申し立てて報酬を児相から受け取る弁護士、虐待を認定する診断書を書いたりする児童精神科医、虐待と認定されて親から切り離された子供の養育を引き受けて国や都道府県から養育費をもらう里親等にもう分配される。これらの人々は、「児童虐待激増の」データに則って、児相がさらに多数の子供を略取・拘禁が可能になるように、児相予算、保護の定員や里親への委託児童数等を増やせ、とことあるごとに言う。厚労省は、「子供の人権」を標榜し、児童養護施設の増設・整備を加速させる。児相に関わる弁護士が拘禁された子供たちの被っている状況を知らないはずがないが、それを公の場所で発言することはない。

建前でいえば、児童精神科医や弁護士は、その専門性ゆえに児相との関わりを持っているのであり、専門的立場からの客観的な評価が期待されているに違いないが、実際には児相から報酬がある以上、児相担当職員の意向に逆らうことは実質的に困難であると推察される。もしも逆らえば、次回からはおそらく嘱託の任を解かれ、報酬も途絶えてしまうだろう。政府の審議会や有機者会議等が、学識経験を付与するためのラバースタンプ化しているのと同様の構図をここにも認めることができる。

児相にに関与する個々人が子供に理解をもつ専門家だとしても、とりこまれて専門性・客観性をおざなりにし、児相職員のさじ加減で「虐待」と子供の人権侵害をつくりだす役回りを担わされれば、そこには一種の「ムラ」ができあがるのも無理はない。

こうして、児童福祉や児童心理を専攻して大学から学位を受け、就職以来、児童福祉のキャリアを積み上げてきたわけでもない児相担当職員が「虐待だ」「施設措置だ」というと、それにお墨付きを与えるため、無理な記述が横行することになる。例えば、親が子供を中学受験に通わせていると、それが子供への「心理的虐待」と描きだされることもある。これでは、関東や関西大都市圏で一般的な私立中学受験を子供にさせている親はみな「児童虐待」していることになるし、進学塾などは有力な児童虐待補助施設になってしまうだろう。

虐待の事実がなかったとしても子供を送致されてしまう事例は枚挙にいとまがない。先ほど述べた晃華学園事件も、そのようなお墨付きので事例の一つだともいえる。

権力の移行でどうにでも変容しうる曖昧募模糊の概念をつくる危険性は、昨今、「特定秘密」の恣意性として非難を避けられない状況にあるが、これは今に始まったことではなく、市民に権力をおしかぶせたい国家のお家芸なのである。