鑑賞者が持ち主ではない場合
1 min read

鑑賞者が持ち主ではない場合

価値の高い日本刀は様々な人が鑑賞しますから、当然持ち主ではない人も刀に触れることになります。鑑賞者は持ち主に対して感謝の意を伝えたいところですが、初心者であれば刀に関する余計なお世辞は言わない方が良いでしょう。ある程度の経験者であれば、「優美だ」「刃文の訴求力がある」「覇気がある」「豪壮だ」「野趣を帯びている」といった決まり文句を知っていますが、これらの言葉を自然に使えるのはそれなりの審美眼があるからです。無理に真似るよりも、自分の言葉で感謝を伝えましょう。

ところで持ち主が美術館であったとしても、注意すべきポイントは沢山あります。例えばガラスケースに入った日本刀を鑑賞する時、初心者は真正面から見続けますが、日本刀は色々な角度で見ないとその醍醐味が伝わりません。特に刀身の模様は光の加減で変化しますから、一番見易い角度を自分で探し出す必要があります。

さて、日本刀は中世の時代には既に価値の高いものとして認識されていましたが、それは鑑定文化がその頃から存在したことを同時に意味します。つまり日本刀は芸術品として古くから扱われてきたのであり、室町時代には作者を当てるゲームまでありました。そのゲームは刀身に刻まれたサインを隠して言い当てるもので、武士にとって教養が試されるものでした。教養と申し上げましたが、刀を見分けるには相当の知識と経験が必要です。刀身を漠と見ただけで誕生した時代が分かるくらいでなければ通用しません。おまけに鉄の色や質を細部まで鑑定することのできる集中力も必要になります。熟達者であれば流派や系統まで全て頭の中にインプットされていたと言われているのです。因みに現代でもこうしたゲームは行われており、日本刀関連の団体が開催しています。