自費出版は敷居が高い
自費出版をするのは、まず、「強く出版したいと思う作品・文章」があって、それを商業出版ができない場合にとる選択、というイメージがあると思います。
しかし、それだけではありません。
自費出版は小説家の卵や強い動機を持って批評を世に出したい、というケースばかりではないのです。
こんなケースがあります。還暦に至った夫婦がいました。二人とも仕事を引退していて、日常生活の中で差し迫ってしなければいけないこと、というものもない。そこで二人は、一本の小説を共作することにしました。二人とも読者として小説が大好きでしたが、書くのは初めてです。なんとか協力して、完結させることができました。この時点で作品としては完結ですが、せっかく二人で協力した結果の産物なので、モノとして残したいと考え、自費出版をすることにしました。
とてもいいことだと思います。この場合、まず出版したいという意思があったのではなく、何か夫婦で協力して作業をしたいという気持ちがあったのです。一種の記念や愛の表現であり、たくさん売ってお金儲けがしたいですとか、自分の思想を強く広めたいという類の欲望ではありません。一般にイメージされるような激しい情熱がなければ出版する権利がないということはないのです。
自分の書いた文章や撮った写真、描いた絵などを出版するというのは、とても楽しいことです。その一方で、「たいした才能があるわけではない、趣味のものだから」と、少し「おこがましい」ような気分を抱いてしまうのもよく理解できることです。
本が好きで、自著の出版に興味があるけれど、恥ずかしい、自信がないと臆してしまう人がいましたら、そこはあまり気にするべきではないと言いたく思います。
プロの作った芸術作品だけが需要がある、というのはシビアに考えれば一面真理ではありますが、家族はどうでしょうか。あなたの抱える従業員はどうでしょうか。俳句サークルのメンバーは。臆せず踏み出せば、きっと自分以外の人にも喜びを与えることができますよ。